高等教育を活性化する大石加奈子のコミュニケーションスキル教育

「話し合いのスキル」「人間力」「社会人基礎力」「問題解決力」の育成

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成果報告2012

創造設計の話し合いで役立てました

 私は、文学特論の講義で修得したファシリテーションスキルを工学の分野において、どのようなアプローチの仕方で活用しているかを本報告書にまとめた。

 技術者にとって必要なスキルは、電気回路や電子工学、プログラミングなどの専門的な能力だけではない。製品を作るうえで、もちろん専門的な能力は非常に重要である。しかし、その専門的な能力を支える、数学や物理、英語、国語などといった基礎的な能力が非常に重要になってくる。ここで、この基礎的な能力と同じ、あるいはそれ以上に重要な能力がある。それは、コミュニケーション能力だ。本講義で修得した「ファシリテーションスキル」もこれにあたる。たとえどんなに素晴らしい能力を持っていたとしても、他人とコミュニケーションがとれなければ、製品を完成させることはできない。私は、このファシリテーションスキルが創造設計という授業で早速力を発揮したと感じた。


図1 製品設計において必要な能力


 創造設計では、与えられたテーマに沿って「世の中にないまったく新しい独創的な製品」を自分たちの手で一から作り上げる。そのため、前述のとおり専門的そして基礎的な能力が重要になってくる。しかし、ここで最も重要なのは、この世の中にないまったく新しい独創的な製品をどのようにして考え、アイデアを出すかという点である。このとき、私はファシリテーションスキルがあるかないかが、独創的な製品設計を大きく左右すると感じた。

 次に、私がこのファシリテーションスキルをどのように活用したか。その手順や方法を示していく。

 私たちの班では、災害用新製品開発会議において、会議のたびに一人ファシリテーターを決め、会議が円滑に進むよう「他人の意見にしっかり耳を傾ける」、「他人の意見を否定しない」、などの注意事項を設けた。ファシリテーターの負担を軽くするために、タイムキーパーや書記なども会議のたびに一人ずつ選出した。また、私は会議中、班長を含め班員一人一人から決められた時間内で意見を聞き、それを全員が見やすいようにホワイトボードに整理するなど「話し合いの可視化」を心がけた。

次に示す図は、実際に私がファシリテーションのときに行った進行手順を表したものである。



図2 ファシリテーションの進行手順


 私のファシリテーションの特徴としては、アイスブレイクを2回行う点である。これは、より良い会議を作るにはまず場の雰囲気が重要であると考え、この時間だけは会議とは全く関係ない雑談を交え、班員がお互いを認め合う気持ちを作るようにした。また、初めに会議の目標、目的を明確にすることによって、有意義な会議になるようにした。意見は出して、整理するだけでなく、それをフィードバックして、もう一度、意見交換、整理を行うことで、質のいい意見、考えのみに絞り込むようした。ファシリテーションの最後には必ず振り返りを行うようにして、ファシリテーターを含めて、会議の反省点や改善点などを挙げた。また、会議の出来を点数で表すことで、「話し合いの可視化」につながり、今回の会議の反省を次の会議に活かすことができた。私は、このようにして修得したファシリテーションスキルを有効に使った。


 会議を円滑に進行するうえでいくつかの重要なことがある。この中でも私は、出た意見をうまく整理し、班員一人一人が理解しやすい形にすることが重要であると考えた。これは、結果的に会議に参加している班員の意識の活性化につながり、より良い意見が出てくることへとつながった。つまり、「話し合いの可視化」が重要なのである。この、話し合いの可視化を実現するために、私は会議のテーマや今話し合っていることにあった適当な図を有効に使用した。このとき使用した図というのは、ファシリテーション演習や自分で調べたものを使用した。その中でも対象とする災害を決定するうえで、非常に有効だったのは「階層構造」型の図である。そのとき、実際に地震について考察したときに使用した図を次に示す。



図3 ファシリテーション時に実際に描いたグラフィック


 このような図を用いれば、災害対象を決定するとともに、その災害に対するニーズや製品の構想まである程度決めることができる。

 ファシリテーションを終え、振り返りを行った際に、班員から私のファシリテーションについて意見をもらうことができた。その中には、「アイスブレイクで班員との信頼を築くことができ、いろんな意見を出すことができた」、「図を効果的に使うことで、視覚的にも非常にわかりやすかった」などの意見があり、班員の反応はとても良かったと感じた。

 また、私自身ほかの班員がファシリテーションを行っているとき、図やアイスブレイクを用いて会議を進行してくれた方が、話し合いの中に自ら入ることができ、いろいろな意見を臆することなく言えたという実感があったように感じた。

 私は、この半年間に修得したファシリテーションスキルをこのように大いに活かすことができ、改めて技術者にとってファシリテーションスキルが重要であるかを感じることができた。これからは、もっとファシリテーションスキルを磨き、製品開発会議においてどのような立場であっても柔軟に対応できるような技術者になりたいと思っている。

インターンシップで役立てました

 私は,この夏にある企業のインターンシップに参加した.このインターンシップにおいて,ファシリテーションのスキルを活かすことができた.


 このインターンシップは,他の4人の参加者とともに「既存のSNSを使ったWebアプリケーションの開発」というテーマで開発を行うという内容であった.

 まず始めに,私がファシリテータを務め,どのようなWebアプリケーションを作成するかを他の参加者と話し合った.その際に,以下の2点について話し合いを行った.


1. 作成するテーマについて絶対条件を好ましい条件

2. どのようなサービスを作成するか


1.作成するテーマについて絶対条件を好ましい条件

 まず,作成するサービスの内容を考える前に,作成するサービスに求められる条件について話し合った.話しあったのは,作成するサービスが必ず備えるべき条件(絶対条件)と,作成するサービスが備えることが望ましい条件(好ましい条件)の2点である.


[絶対条件]

● 既存のSNSを使ったWebアプリケーション

● インターンシップの期間内に完成できるもの

● 全員が開発に参加することができる


[好ましい条件]

● 面白いアプリケーションであること

● 既存のアプリケーションでないこと



Figure 1 出たアイデアの一部


2.どのようなサービスを作成するか

 まず,絶対条件をもとに全員でアイデアを考えた.このとき,参加者で議論の前に以下のような議論のルールを定めて,参加者が気軽にアイデアを出せるように心がけた.


● 他人を否定するような意見を出さない

● とにかくアイデアを出す(質より量)

● 奇抜なアイデアも受け入れる

(ブレーンストーミングの手法を参考にした)


 次にアイデアが十分にでた頃を見計らって,意見の収束を図った.まず,このアイデア群の中から自分たちで作成するテーマを決めるために,好ましい条件を考慮に入れながら,ペイオフマトリクスで自分たちに最適なテーマを選んだ.


Table 1 作成したペイオフマトリクスの一部


 作成したペイオフマトリクスから,

● インターンシップの期間内に完成できる程度の難易度のサービス

● 自分たちが面白いと思えるサービス

の両方に合うサービスを選択し,「SNSのつながりをグラフで表現するサービス」を作成することにした.


 このあと,全員が意見を出して話し合った結果に基づいてWebアプリケーションの作成を行い,期間内に無事完成させることができた.


 チーム内では,最初の話し合いが良かったという意見を聞くことができた.プロジェクトにおけるファシリテーションの重要性を再認識することができた.

創造設計の話し合いで役立てました

1. ファシリテーションスキルの活用の場

 私がファシリテーションスキルを最も活用している場は、制御情報工学科の授業である創造設計の時間である。私はリーダーを務めているため、話し合いではファシリテーターの役割をすることが多い。特に話し合いの機会が多かった時期は企画発表の前の時間である。企画発表は自分達の班がどのようなものを企画したかを発表する場で独創的なアイデアが求められる。その準備をする過程で私はファシリテーションスキルを発揮した。まずは、最初の段階で班員の多くのアイデアを引き出すために図1のようなマインドマップを作成した。創造設計のテーマが「災害対策機器」だったため、中央に「災害」をおいて作成した。これにより多くのアイデアを集めることができ、会議を円滑に進めることができた。その後も話し合いの機会は多くあったが、半年間で修得したファシリテーションスキルを駆使して、図2のような手順を踏んで創造設計を進めている。他にも私は以下のようなことを心掛けて、話し合いの進行を行なっている。


? 意見を出していない人がいたら自分からふってみる。

? 良い雰囲気で話し合いができるよう、雑談する時間も設ける。

? 曖昧なことは残さない。

? 全員が納得する結論を出す。



 また、ファシリテーションスキルを活用できた経験は他にもある。それは、友人達と遊んでいるときである。例えば、今後の予定や相談事の話になったときに円滑に全員が納得できる結論を出すことができる。そのときは図等を使用することはできないが、創造設計の手順と同様に多くの意見を出し合い、最適な結論を出すようにしている。



2. ファシリテーションスキルを活かしたことによる周りの反応

 私がファシリテーションスキルを活かしたことによって最も感じた周りの反応は、全員が気持ちよく会議に参加できていたということである。例えば、全員が自分の意見を発言していたり、結論に全員が納得していたりする様子から気持ちの良い会議になっていることが確認できた。その理由は会議の雰囲気が明るく、話し合いは円滑に進み、最適な結論を出すことができていたからだと思う。しかし、過去に経験した力量不足の人がファシリテーターだった会議を思い出すと、ほとんどの人が会議の進行状況を理解できていなかった。そのため、ファシリテーターがファシリテーションスキルを持っているか持っていないかで周りの空気や雰囲気が大きく異なってくると思った。



3. ファシリテーションスキルを活かしたことによる所感

 私はファシリテーションスキルを活かした会議を行なったことによって、会議を進行することの有意義さを感じることができた。これは、ファシリテーションスキルを身に付けずに会議の進行役を行なったときにはなかった感情である。そのため、私は半年感の授業を通してファシリテーターとして成長することができたことになる。

 また、ファシリテーションスキルは友人達との会話等の日常の中でも使用できることを実感した。そのため、コミュニケーション能力の向上にもつながるのではないかと感じた。コミュニケーション能力は現在の社会では非常に必要とされている力のため、ファシリテーションスキルを身に付けることは様々な分野に応用できると感じた。

 さらに、私は会議はファシリテーターの力量によって大きく左右されるということを実感した。ファシリテーターは場の空気や会議の流れを作り、最後には最適な選択をしなければいけない重要な役割である。私は創造設計でファシリテーターを務めることが多いが、まだまだ未熟なところがある。しかし、就職すれば会議や話し合いをする機会も多くなる。そのため、あと半年間の創造設計等の話し合いをする時間で常にファシリテーションスキルの向上を目指していき、今後の人生に活かしていきたいと考えている。

アルバイト店で売り上げを向上させました

はじめに

 私は、授業で行った問題解決ファシリテーション会議によって、たくさんの意見を引き出す能力と意見を絞り込んでいき、皆が納得する結論を出す能力を向上させることができたと感じています。このレポートでは、アルバイト先でこれらの能力を活用することができた、1つの経験について書いていきます。



アルバイト先で発生した問題

 まずは、私のアルバイト先であるK店について説明します。K店は、ラーメンなどの食事メニューの他に、ポテトやクレープや今川焼など、色々な種類の食品を扱うファーストフード店です。私は、週末の夕方から閉店までの2時間、パートの女性や年下のアルバイト店員と、3人で働いています。この店では、「日によって売れ行きが上下し、決められたノルマが達成できない」という問題が発生していました。私はこの問題を解決するため、一緒に働く人たちにさりげなく質問してみることにしました。すると、売れる商品は季節や天候によって違うという事実が発覚しました。この事実から、より明確な「季節や天候によって、売れる商品が左右される」という問題点を見つけ出すことができました。そこで私は、この問題点をどのように克服するかを考えるために、「季節や天候によって、売れる商品がどう変化するか」調査しました。



ファシリテーション会議

 ファシリテーション会議を行うため、十分な事前調査の後に、Fig2の問題と現状をあらかじめ記入しておいたものを準備しておくことにました。話し合いが成功しなければ、せっかくの準備が無駄になってしまいます。そこで私は、話し合いの時間がもてる機会を待つことにしました。しばらく経った頃に、その機会が訪れました。閉店後に、バックヤードで売り上げの話になったのです。『少し考えてみたのですが…』と話をもちかたところ、簡単なファシリテーション会議を行いました。会議中はファシリテーターとして、たくさんの意見を引き出し、その意見を絞り込んで、皆が納得する結論を出すことができたと思います。




Fig1 問題発覚から対策案の実施までの手順


Fig2 ファシリテーション会議で用いたグラフィック



対策案の実施

 会議での話し合いの結果、Fig2に示すような結論が出ました。普段は、店員同士で話し合う機会がなかなか無いため、この会議はとても意味深いものとなったようです。短い会議ではありましたが、この対策を実施した結果、呼び込みの効果を上昇させることに成功しました。さらに、相乗効果として売り上げも少し上昇し、最終目的であるノルマ達成率の向上を成し遂げることができました。



まとめ

 今回のこの経験を通して、実際にファシリテーション能力が社会で役に立つものであることが再確認できました。また、授業では会議の場が準備されていましたが、K店では自分で話し合いの場を作り出さねばならず、その大変さについても学ぶことができ、良い経験になったと思います。せっかく会得できたこのスキルを、学校の授業に限らず、社会人になってからも活用していけるよう努力したいです。

クラブ活動での話し合いがスムーズに

議題:今年度高専大会で優勝するためには今後どのようにしていったらいいか


 ・この議題は、5月に話し合ったものである。まず初めにチームの良い点と悪い点をそれぞれ挙げていき、現在自分たちには何ができて、何ができないのかを明白にする。次に、伸ばすべき点,改善すべき点と現状維持にする点に分ける。



 ・次に、伸ばす点に挙げられたものをどのような練習によって伸ばしていく一人三つほど練習方法を提案させる。 ・提案された練習方法が、大会までの期間にどれほど効果が挙げられるのかペイオフマトリクスによって最適なものを見つけ出す。



 ・以上より②④⑧⑨の四つが時間的にも効果的にも有効であると判断した。しかし、話し合いの中で④に関しては、授業や実験のある平日では現実的でないのではないか、という反応をする部員がいた。このことについて、後日四年生で再度話し合った結果、平日は50本、休日練習の時は150本ということに決定した。

 ・②⑧⑨についてだが、重みづけ評価の必要が無いと判断した。なぜならばこの三つは、練習に取り込むにあたっての満たさなければならない二つの条件[Ⅰ:一つ一つの練習にかかる時間が15分以内であること Ⅱ:部員全員が練習の意味をしっかりと理解できる内容であること] がそろっていることが明白であったため、重みづけ評価を行わなかった。



◎一人一人の課題について

 チーム全体の課題もあるが、一人一人にも当然課題はある。そのため、先ほどの問題解決のためのプロセスを個人個人で行った。

 後に気が付いたことだが、自分自身の問題についてプロセスを実行しようとすると、自分自身の問題を特定できないことがある。本人は「できている」と思っていても、客観的に見れば「できていない」こともある。このことから、一人一人の問題を解決していくプロセスは、自分以外の人に作成してもらうことで、客観的な見方で問題を解決することができるのではないかと感じた。


 


◎部員の反応と私が感じたこと

 今までもミーティングは行っていたが、毎回のように話がまとまらずにいた。それに加えて、上級生の発言権が強いため下級生がほとんど発言することがなかった。今回、文学特論の授業で習った問題解決のプロセスを参考にすることで、問題及びその解決案を明確に導くことができた。また、ファシリテーターを設けることで、下級生が発言できる機会ができ、多くの意見を聞くことができた。

 今までの話し合いは、ホワイトボードなど意見を記述するものを一切使っていなかった。今回のように問題点を書き出していき、目に見える形にしたことで、部員全員の認識を一致させることができた。図などを取り入れていくことで、より良い話し合いができると感じた。

 ミーティングの前にみんなで軽く遊んだ(アイスブレイクを行った)。このことにより、下級生との距離が近くなり意見を言いやすい環境を、作ることができたのかな、とも感じた。

 今までよりもスムーズに話が進んだため、イライラしてしまう人が出なかった。安定した精神での話し合いができてとても有意義に感じた。これからもこの経験を生かして、いろいろな会議に参加したいと思う。

創造設計のアイデア出しの場面で役立てました

 私は半年間で習得したファシリテーションスキルを創造設計のアイデア出しの場面で活用しました。創造設計 のリーダーという立場からアイデアをまとめるということでファシリテーションを活かすことができました。


 具体的にどのようなファシリテーションを行ったかというと、災害というテーマが与えられていたのでひとつの災 害を決め、何が起こるかを出していき、その際どうなってほしいor どうしたいかを考え、最終的にどういう製品が 作れるかというのをファシリテーションしました。



図1 アイデア出しの流れ


 まず始めに私たちは「地震」という災害にしようと決めていたので、そこから「地震の起きる前」「地震の起きてる 最中」「自身が起きた後」という3つの場面を出してきて、「何が起きるだろうか」をメンバーに自由に意見を出し てもらいました。これを行ったことでどんな場面が重要かや特徴的かなどがわかりました。またメンバー全員で 「地震」という災害の認識を共有することができたと思います。



図1 地震で起きること


 次に最初行った「地震で起きること」をふまえて、地震でどのような「場面」があるかを並べて書き出して、それに 対して「欲しいもの」を書いていきました。「欲しいもの」は漠然とした意見を求めることで簡単に意見を出すことが できました。その後、「欲しいもの」を見ながらこんなものが作れるかもねという簡単な製品案が出てきたので、自 分がやってみたいと思うものに投票を行いました。1人2票で作れる作れないにかかわらず自由な投票を行い、 メンバーがどんなものを作ってみたいのかがわかりました。そして、投票された「欲しいもの」の全部を使用して、 似たような内容をまとめました。



図2 欲しいもの


 最後に分類分けしたものを「製品アイデア」にして、それらは「どんなことができたらいいだろうか」という意見を 集めました。これによってメンバーで具体性のあるアイデアが出てきました。アイデアとしてまとめることができまし た。



図3 製品アイデア


 この結果、メンバー全員が④メディカルチェックがいいのではないかという意見にまとまりました。特に誰も反対 することなくすんなりと決めることが出来ました。このあとは製品設計をメンバーでじっくりと行いました。

 ファシリテーションを生かしたアイデア出しで創造設計のメンバーは楽しく気軽に意見を出し合えたと思います。 私が「何かアイデアはない?」と唐突に聞いてメンバー全員が悩んでしまい、なかなかアイデアが出なかった時 がありました。しかし、大きなところから漠然とした意見を集めてまとめていくファシリテーションを行ったことでどん どんと意見が出てきて、アイデアを作るまでスムーズに行うことが出来ました。メンバー同士が和気あいあいと話 し合いが行えたことで、アイデアを順調に作るだけでなく、メンバー同士の中も深まったのではないかと思います。

 私は創造設計のリーダーという立場でアイデアを創り上げなければいけない使命がありました。最初は、良い アイデアを出さなければいけないということから私自身が焦っていました。メンバーにはいきなりアイデアを求め てしまい申し訳なかったと今では思っています。ファシリテーションを行ったことで私が思っていたよりメンバーは 意見を持っていてくれているんだなと感じることができました。そして、メンバー同士が仲良くなることができたの でプレゼンなどのときもメンバーに協力してもらうことができました。創造設計は大変で苦労もあると思いますが、 メンバー同士で仲がいいので今後楽しくやっていけると思います。ファシリテーションをしてよかったです。

インターンシップで活用し皆が満足しました

 私は半年間の授業で修得したファシリテーションスキルを今年度の夏季休業中に行ったインターンシップ先で活用しました。私が行ったインターンシップ先”npo法人SIDAM”では、チームで作業をする仕事がほとんどであったため、話し合いがとても重要となりました。特に、インターンシップに来ている学生全員での共同作業で沼津市商店街における防災ハザードマップ作成や、居酒屋のWebページ作成の仕事を行う際には全員で話し合い、ロードマップ作成から完成までの一連の作業計画を行う必要がありました。そこで授業で修得したファシリテーションスキルが大きく活かされました。

 Fig.1に、インターンシップ先での作業計画をする際に行ったファシリテーションの流れについて示します。



Fig.1 インターンシップ先でのファシリテーションの流れ


 具体的にFig.1に沿って実際にインターンシップ先で行ったファシリテーションの流れを説明します。

① 一人当たり3分間、お題に沿って時間通りにスピーチするアイスブレイクをしました。そこでお互いを知ることができ、面白い話を聞き、笑いが生まれとても良い雰囲気になりました。アイスブレイクの重要性を再認識しました。

② 防災ハザードマップ作成、居酒屋のWebページ制作をして完成させるといった目的を確認し共有しました。

③ その目的を達成させるためには何をするのか、何をしたらいいのかという完成までのプロセスに必要な事項をたくさん挙げました。例えば、防災ハザードマップ作成に関しては、“避難ビル・避難ルートの選定基準はどうするのか”、“いつまでにマップを完成させるのか”などです。又、居酒屋のWebページ制作であれば“居酒屋へアポ取り“、”Webに載せる宣伝内容の確認”、“居酒屋の写真及び商品の写真撮影が必要”などといった完成までのプロセスを思いつく限り挙げました。

 授業では意見を列挙する際には付箋紙を利用しましたが、インターンシップ先ではパソコンを使い「googleドキュメント」を利用しインターネット上のドキュメントに意見を列挙し、その情報を全員で共有する方法をとりました。全員が別々のパソコンからそのリアルタイムで更新される意見を共有できることは、離れた場所にいる方との話し合いに便利であると感じました。実際にインターンシップでハザードマップ作成の際に必要となる前提情報を列挙したドキュメントをFig.2に示します。

④ その後、列挙した意見や情報を元に完成までのプロセスを最適化するため、ECRS(Eliminate Combine Replace Simplify)に沿って結びつきを探し単純化し行動を明確にすることで無駄なプロセスを省き、完成までの作業計画を再構築しました。また、整理した情報はロードマップ等を作成し、図解することで情報整理しました。

⑤ 最終的な作業計画をまとめ、全員が合意し作業計画は完成しました。


 インターンシップ先では、このファシリテーションを活用して作成した作業計画をSIDAMの理事長をはじめとする職員の方々にプレゼンテーションを行いました。そこで、文学特論の授業で学んだプレゼンテーションスキルも活かされました。無事理事長らに作業計画の承認をいただき、ファシリテーションを活用し作成した作業計画が有意義なものとなりました。

 以上のことから、私はインターンシップを通してファシリテーションの重要性や有用性、活用の仕方を身を持って体験することができました。


 ファシリテーションを実施したことで話し合いはスムーズに行き、私も含め周りのみんなはストレスなく話し合いが行え、また細かい所まで詰めて話し合いができました。そのため作業計画もしっかりとしたものが出来上がり、ハザードマップやWebページの制作が非常に効率よくでき、チームメンバーやインターン先の理事長の反応も大変満足されていました。

 仮にファシリテーションを行わずに作業計画を進めていたら、意見がかみ合わずまとまりに非常に苦労したと考えられます。私はインターンシップという場を借りファシリテーションスキルを実践したことで、ファシリテーションスキルは必ず社会に出たときに役立つことを肌で実感しました。



Fig.2 googleドキュメントによるファイル共有を利用した情報の列挙

MIRS製作で活用しました

1. スキル使用場面

 電子制御工学科の専門演習にはMIRSがある。夏休みの学校見学におけるMIRS競技の基本戦略決定時にスキルを使用した。MIRS1103班は障害物を含めた迷路を走破するための戦略を話し合った。また、MIRSとは自立型のロボットを制御するシステムのことである。


2. 進行の流れ

(ア) 共有段階

①日頃からの班員の仲を良くする。

 話し合いにおける緊張や班員同士の過度な反論をさけるために普段から仲間意識をもつようにした。結果、前述のようなことは起こることがなかった。

② MIRSにおける情報交換。

 競技ルールや競技場などの最新情報は班員全体にいきわたるようにした。これにより、現時点での最良の結果を導けるようにし、それぞれの意見認識の誤差が小さくなった。

③ 事前に各個人で戦略に対するアイデアを考えておく。

 会議を初めてすぐさまアイデアを出せることはない。時間のロスを防ぐためにも、それぞれ自分なりの戦略を簡単でもいいので事前に考えた。


(イ) 発散段階

① それぞれ自分のアイデアを黒板に書きだす。

 各個人のアイデアを全員に公開した。このときほかの人のアイデアに触発されて、多くのアイデアが生まれた。


(ウ) 収束段階

① 発散段階で集まった意見を分類する。

 10ほどの戦略が提案された。似たような戦略もあるので分類し、以下の二つのパターンに収束することができた。

●パターンA 時間サービス狙いの最短距離走破パターン

>「とにかくゴールしたい」

>「あまり難しい障害物はクリアできる自信がない」

>「コースが公開されているため」

●パターンB 障害物クリアのサービス狙いの障害物突破パターン

>「今後の本番に役に立つ」

>「MIRSの機能が生かせる」

(エ) 決定段階

① 収束された2パターンの重みづけを行った。

 最終的な戦略を決定するためにこの二つに重み付けを行った。重みづけの結果は以下の表のようになった。



表.1 重みづけ


 MIRS開発を始めてから間もないため、プログラムの内容を理解しきれていない。また開発時間などの関係も考えると、パターンAが適切であることが解った。


3. 周囲の反応

 班員全体の意識が固まっていたように思える。いままでは個人がそれぞれ自分のやることを自分だけで考えて行動していた。それが一度、スキルを使用した話し合いを通すことで班の基本方針を定めることができた。さらに目標が定まったことで、班員それぞれのモチベーションが向上した。やるべきことが明確に分かっているだけでも班員のやる気が違うことが見て取ることができた。


4. スキル使用の感想

 今までは話し合いについてそれほど力を入れることが無かった。何か意見が出ればそれが最適かどうかにかかわらずに決定していた。しかし今回、ファシリテーションスキルを使用した話し合いを、自分たちで実施したことは大きな進歩だと思う。決定した戦略への満足度も高く、話し合い自体が苦にならない充実した会議になるということが解ったからだ。

 ファシリテーションスキルは学生の間だけではなく、社会人としても使える技能だと感じた。学生のうちにこの技能を身に着けておき、自らの能力の一つにしたい。

大石加奈子

東北工業大学ライフデザイン学部
経営コミュニケーション学科
教授
東北大学大学院工学研究科   特任教授

大石加奈子

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