創造設計の話し合いで役立てました
私は、文学特論の講義で修得したファシリテーションスキルを工学の分野において、どのようなアプローチの仕方で活用しているかを本報告書にまとめた。
技術者にとって必要なスキルは、電気回路や電子工学、プログラミングなどの専門的な能力だけではない。製品を作るうえで、もちろん専門的な能力は非常に重要である。しかし、その専門的な能力を支える、数学や物理、英語、国語などといった基礎的な能力が非常に重要になってくる。ここで、この基礎的な能力と同じ、あるいはそれ以上に重要な能力がある。それは、コミュニケーション能力だ。本講義で修得した「ファシリテーションスキル」もこれにあたる。たとえどんなに素晴らしい能力を持っていたとしても、他人とコミュニケーションがとれなければ、製品を完成させることはできない。私は、このファシリテーションスキルが創造設計という授業で早速力を発揮したと感じた。
図1 製品設計において必要な能力
創造設計では、与えられたテーマに沿って「世の中にないまったく新しい独創的な製品」を自分たちの手で一から作り上げる。そのため、前述のとおり専門的そして基礎的な能力が重要になってくる。しかし、ここで最も重要なのは、この世の中にないまったく新しい独創的な製品をどのようにして考え、アイデアを出すかという点である。このとき、私はファシリテーションスキルがあるかないかが、独創的な製品設計を大きく左右すると感じた。
次に、私がこのファシリテーションスキルをどのように活用したか。その手順や方法を示していく。
私たちの班では、災害用新製品開発会議において、会議のたびに一人ファシリテーターを決め、会議が円滑に進むよう「他人の意見にしっかり耳を傾ける」、「他人の意見を否定しない」、などの注意事項を設けた。ファシリテーターの負担を軽くするために、タイムキーパーや書記なども会議のたびに一人ずつ選出した。また、私は会議中、班長を含め班員一人一人から決められた時間内で意見を聞き、それを全員が見やすいようにホワイトボードに整理するなど「話し合いの可視化」を心がけた。
次に示す図は、実際に私がファシリテーションのときに行った進行手順を表したものである。
図2 ファシリテーションの進行手順
私のファシリテーションの特徴としては、アイスブレイクを2回行う点である。これは、より良い会議を作るにはまず場の雰囲気が重要であると考え、この時間だけは会議とは全く関係ない雑談を交え、班員がお互いを認め合う気持ちを作るようにした。また、初めに会議の目標、目的を明確にすることによって、有意義な会議になるようにした。意見は出して、整理するだけでなく、それをフィードバックして、もう一度、意見交換、整理を行うことで、質のいい意見、考えのみに絞り込むようした。ファシリテーションの最後には必ず振り返りを行うようにして、ファシリテーターを含めて、会議の反省点や改善点などを挙げた。また、会議の出来を点数で表すことで、「話し合いの可視化」につながり、今回の会議の反省を次の会議に活かすことができた。私は、このようにして修得したファシリテーションスキルを有効に使った。
会議を円滑に進行するうえでいくつかの重要なことがある。この中でも私は、出た意見をうまく整理し、班員一人一人が理解しやすい形にすることが重要であると考えた。これは、結果的に会議に参加している班員の意識の活性化につながり、より良い意見が出てくることへとつながった。つまり、「話し合いの可視化」が重要なのである。この、話し合いの可視化を実現するために、私は会議のテーマや今話し合っていることにあった適当な図を有効に使用した。このとき使用した図というのは、ファシリテーション演習や自分で調べたものを使用した。その中でも対象とする災害を決定するうえで、非常に有効だったのは「階層構造」型の図である。そのとき、実際に地震について考察したときに使用した図を次に示す。
図3 ファシリテーション時に実際に描いたグラフィック
このような図を用いれば、災害対象を決定するとともに、その災害に対するニーズや製品の構想まである程度決めることができる。
ファシリテーションを終え、振り返りを行った際に、班員から私のファシリテーションについて意見をもらうことができた。その中には、「アイスブレイクで班員との信頼を築くことができ、いろんな意見を出すことができた」、「図を効果的に使うことで、視覚的にも非常にわかりやすかった」などの意見があり、班員の反応はとても良かったと感じた。
また、私自身ほかの班員がファシリテーションを行っているとき、図やアイスブレイクを用いて会議を進行してくれた方が、話し合いの中に自ら入ることができ、いろいろな意見を臆することなく言えたという実感があったように感じた。
私は、この半年間に修得したファシリテーションスキルをこのように大いに活かすことができ、改めて技術者にとってファシリテーションスキルが重要であるかを感じることができた。これからは、もっとファシリテーションスキルを磨き、製品開発会議においてどのような立場であっても柔軟に対応できるような技術者になりたいと思っている。